町の境を越えた川向こうの集落の畑に、二本の梅の木がある。
母が家に嫁ぐ前からあるそうなのでもう三十年以上前に植えられたらしい。

そこの梅の実を祖母と親戚とで取りに行く。有り得ないほど実っていて驚き。
特に上の枝に群がって実っていて、親戚が
「ほんとこれは鈴生りだねえ」
と言ったのを聞いて「うまいねえ」などと思ったけど
当たり前のことを言っただけなので、なにがうまかったのかよくわからない。
途中、木に登ろうとして足を滑らし顎と喉に強烈な擦り傷ができる。
顎は隠れるからいいとして、喉に真一文字に傷が走っているのは何か意味深でいやだ。
ガーゼで隠したけど逆に皆の視線が喉に集中する結果になる。