空虚を満たしてくれる、唯一貴重なものとは?
- 作者: 阿刀田高
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/12/20
- メディア: 新書
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主人公が娼家で女とたわむれるシーンなんですが…
女のふっくらとした重みのある乳房を柔らかく握ってみて、言いようのない快感を感じた。
それは何か値うちのあるようなものに触れている感じだった。
軽く揺すると、気持ちのいい重さが手のひらに感ぜられる。それをなんと言い現していいかわからなかった。「豊年だ! 豊年だ!」と言った。
そう言いながら、彼は幾度となくそれを揺さぶった。何か知れなかった。
が、とにかくそれは彼の空虚を満たしてくれる、何かしら唯一の貴重な物、その象徴として彼には感ぜられるのであった。
私もアレを目の前にすると言いようのない快感を感じます。もしかするとおっぱいの見せ方にもスイッチのON/OFFを決めるシナプスのような物があるかもしれませんが、それはまた別のバトルサーガで。
筆者の阿刀田高先生は志賀直哉のこの表現に、「文豪にふさわしく品位を落とすことなく、エロチシズムを鮮やかに書ききっています」と感想を寄せています。
さすが阿刀田先生、こう書かれると『そうですね、エロで鮮やかですよね』と私なんかは完璧に誤解して返事をしてしまいます。でも先生、最後の部分はもっと切実で普遍的なテーマが込められているテクストではないかと私は思うのですが、そう思われるだけですか。ですか。
それにしても『乳房(ちぶさ)』という言葉、良いですね。なにか林檎や蜜柑、いや、葡萄や白桃のように畑で取れる果物のような瑞々しい華やかさを感じます。